「同じ時代を生きている、まだ世間的評価が定まらないアーティストだからこそ、この人の作品好き!っていう楽しみがあると思うのよね」と言ったら、
「こういう人たちこそ本当のアーティストだと思うんだよね」と友人が返した。
実はちょっとむっとした。
二人とも世界的にすでに評判が確立したアーティストだもの。
この二人がすごいっていうのは誰だって「安心して」言える。
小澤征爾の音楽は、とくに彼のブラームスとマーラーが好きで聴いてきた。
村上春樹は、学生の頃に初めて読んだのが「1973年のピンボール」。
当時はまったく受け付けなかった。
なんだけれど、30代になって韓国の友人から「村上春樹が世界で最も好きな作家」と言われた。
彼は「日本語でそのまま村上春樹の小説が読めるなんて羨ましい」とまで言った。
それがきっかけで「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」を読んで、「こんな作家だったんだ」と驚いた。
それから彼の著作はおおかた読んでいる。
であるにも関わらず、上記のような友人との会話から手にとるのが遅れた本。
まあ、ひとえに、私の天の邪鬼的性格による。
さらには、この本の欠点をみつけてみたいというチョイと意地悪な魂胆あり、で読み始めたにも関わらず、途中から夢中になって読んでしまった。
村上春樹がいかに音楽を深く聴いているかに改めて脱帽(ジャズへの傾倒は知っていたけれど、クラシックもここまで!)。
指揮という仕事の中身が、正直な〜んにもわかっていなかったなと思う、この本を読んで。
気に入った曲のスコアを読んでみたことはあったけれど、「スコアを読み込む」ということがどういうことなのか、小澤さんの言葉を読んでイメージできた(ような気がする)。
常任指揮者としてオーケストラを、明確な方向性をもって育てる意識がまた面白い。
途中で挿入される、村上春樹の小説を書くに際しての姿勢への言及も興味深い。
村上春樹の「ポートレイト・イン・ジャズ」を読んだ時もそうだったのだけれど、音楽が無性に聴きたくなる本。
というわけで、今宵は小沢征爾指揮サイトウ・キネン・オーケストラ ブラームス交響曲第一番(録音1989年)を大音量で聴くことにする(SONYが通販用に出していた限定版?)。
ブラームスは学生の頃から変わらず好きだ。
当時サガンに傾倒していて、「ブラームスはお好き?」を読んだから、というわけではないのだけれどw
初めて聴いたのは、フルトベングラー指揮のブラームス4番だったっけ。
あの出だしもよかった、、、。
コメントをお書きください