小田原市と足柄下郡の学校栄養教諭と栄養職員の方々対象の食育研修会にお呼びいただき、体験型の講演をさせていただきました。
「栄養」が専門でないからこそ見えるものもあるはず
今回の演題は「あえて『栄養』にふれない食育」とさせていただきました。
後できいた話によれば、「私たちは栄養士なのに、なぜ栄養にふれない食育なの?」という声も実はあったといいます。
食育は、ただ栄養の知識だけを身につければいいのではありません。
そして私は栄養士ではありません。
栄養を専攻していないからこそ、食育に必要なものが見えるという側面もあるだろうと考え、食育のワークショップを続けて11年になりました。
食から教科を見る、食から社会をみる。実学に引き戻す試み
東大名誉教授の宇沢弘文氏が作ったものの文科省の認可がおりなかった幻の算数の教科書があったといいます。江戸時代の農民たちは学があったわけでもないのに、ピラミッド型に積み重ねられた俵の一番下の段の数を数えたら即座に全部で何俵になるかを計算できた。そんな実学としての算数を教えるべきだという宇沢先生の思いがつまった教科書だったといいます。
食の探偵団の「食育塾」学習指導要領を読み込みます
そのことを知ったのは何年も前。
それから、食を通じて教科を学ぶという方向性をも視野にいれ、プログラムを開発してきました。そうしたプログラムは、札幌や千葉などの小学校で実際にやらせていただいたこともあり、夏休みなどを利用して自主開催もしてきました。
名付けて「食の探偵団の食育塾」w。
プログラムを作るについては学習指導要領を読み込み、その学年で習うもの、たとえば「円グラフを読み取る」にあわせて食と結びつけるプログラムを作ります。
例をあげてみましょう。
並寿司のネタを並べ、それぞれのネタがどの国から輸入されているのか、表から円グラフを作ります。円グラフを見ると、たとえばタコの約半数が国産で、輸入が半分。そのうちのトップがモーリタニアからの輸入とわかります。さて、では、そのモーリタニアとはどこにあるかを世界地図でみてみましょう。モーリタニアではタコはどんなふうに食べるのでしょうか(あるいは食べないのでしょうか)?
北海道の西海岸で食育のワークショップを開催した際には、鰊をテーマにしました。かつては御殿がたつほどにとれたという鰊。なぜ今は穫れなくなってしまったのか。鰊が戻ってくるようにと、地元では鰊の生態についての研究がすすめられ、そのための環境を整える試みが始まっています。その近況について地元の漁協にインタビューして調べていきます。
社会の勉強でもあり、また理科の勉強でもあり、自分でインタビューをするとなれば国語にも、またそうした一連の活動を段どるとなれば、フローチャートを組み立てる数学にもつながります。
今回、「食と教科の繋がりをぜひ」とのご要望を事前にいただきました。ねがったりかなったり、です。学校で日々子どもたちと関わる方々にお伝えすることができれば、そこから皆さんがいかようにも応用してくれるはず!
まずは五感!
自分でプログラムを考えるところまでやっていただきました
今回体験していただいたプログラムは、
- においあてクイズ
- てざわりクイズ
- 五感をつかむ、語感をつかむ
- バラバラレシピに挑戦
でしたが、他にも10種類ほどのプログラム例をご紹介しました。
その中で、そうしたプログラムと教科との関連についても触れ、最後にやっていただいたのは、SUSHIをテーマに食育プログラムを考えるというもの。班ごとに話し合い、提案をお願いしたところ、ユニークなものが出てくる出てくる。
「みんなで考えたらあんなにいろいろでてくるんだ!と自信になりました」とのこと。嬉しい感想です!
毎日一つ食育ネタ帖のすすめ
講演後、事務局をつとめてくださった数名とともにランチをいただきながら、学校の食育を巡る課題についておおいに盛り上がりました。
栄養教諭や栄養職員の方々は、食育基本法ができてから、今まで行ってきた栄養バランスのとれた給食の献立を作ることや子ども達への食育指導にとどまらず、保護者や地域への働きかけや、地場産給食の推進や、教壇にたっての指導(ティームティーチング含む)と、その職務の範囲はどんどん広くなってきています。
担任をもたず、全校の児童との関わりがある中で、教壇に立つ時だけではなく、日々の子どもたちとのふれあいの中でどう食の楽しさ大切さを伝えるかも課題とのこと。
食育の第一歩は、食に興味を持つこと。
自分自身が「おもしろい!」と思えば、子どもたちにも「伝えたい!」という気持ちが伝わるものと思うのです。
ちょっとした小咄でも構わない。子どもたちが食に興味や関心をもてるように、日々自分自身が「おもしろい!」と思えるネタを集めることが、まずは第一歩なのでは?と提案させていただいたところ、「是非やってみます!」と皆さんの目が輝きました。
私自身もまた、日々食にまつわる情報をネットから、人から、書籍から、集め、食について今までと違う視点を持ってもらえるようなプログラムに落とし込んでいけるよう、精進したいと思います。
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