オルタナティブ・フードという考え方

駝鳥は世界を救う!と精力的に活動している加藤「駝鳥」貴之氏が立ち上げたオルタナティブ・フード・パーティ(AFP)の設立準備会に参加してきた。

この会の趣旨を短く言えば
「その食材が食べられることで、食糧問題、環境問題、伝統保護などに貢献するような食材の普及をしていくプロジェクト」

ダチョウのたたき 肉質も柔らかく美味。1kg育てるのに牛肉の半分以下の穀物飼料でOK。はやく育つので飼育期間も短い。奥に並ぶのは固定種の野菜
ダチョウのたたき 肉質も柔らかく美味。1kg育てるのに牛肉の半分以下の穀物飼料でOK。はやく育つので飼育期間も短い。奥に並ぶのは固定種の野菜

未来の食のために今普及させるべき食材を広めたい

加藤氏との出会いは2年ほど前になるだろうか。

突然「駝鳥を乾物にしようと思うのですが」とメールが届き、会って話すことになった。

食に対する考え方にとても近いものを感じ、また、オルタナティブ・フードとしての駝鳥の可能性について、当時ある限りのデータを提供しつつ、論理的に語る姿に、秘めたる情熱を感じさせられた。

そして今、「突っ走る」という感じで駝鳥普及につとめる中で、「駝鳥だけでなく、駝鳥と同じように未来の食のために今普及させるべきと思う食材をあわせて普及していきたい」という思いに至ったという。

ワニ肉は、エサがほんとうに少なくてすむ、エコな白身肉

エサはほんの少量で生きていけるワニ。白身肉。
エサはほんの少量で生きていけるワニ。白身肉。

たとえばワニ。
ほんの少量の食べものでも長く生きることができる。
今は、鷄肉をとった残り、人間の食用にならない部分をエサにして育てているという。日本では法律の縛りも厳しく、生産者は熱海に1軒のみとのこと。
白身の肉。
尾は肉質は柔らかく、手足はしまった食感。

ボンレスと呼ばれる諸々まざった部分は旨味が濃くておいしい。

私はとくに手足の歯ごたえのある食感が気に入った。ケイジャンスパイスを効かせたらかなり美味しくなりそうな予感。皮もカリカリにあげてサラダにトッピングなんぞしたらいけそうだ。

実は10年以上前に、友人宅のバーベキューでワニを食べたことはあるのだが、正直いえば、その時は、「物珍しいし、普通においしいけれど、とくにわざわざ取り寄せてまで食べることもないかな」と感じていた。

ただ、加藤氏が語るように、オルタナティブ・フードとしての可能性を考えれば、今後普及していく価値がある肉と思える。

ひきわり大豆で作るテンペ。皮ごと利用できるため栄養価も高く美味

従来のテンペは匂いが強く味にクセがあるものが多いが、これは文句無くおいしいテンペゴレンだった。
従来のテンペは匂いが強く味にクセがあるものが多いが、これは文句無くおいしいテンペゴレンだった。

インドネシアの大豆加工食品テンペは、納豆と同じ工程で作ることができる。

違いはイネワラに住む納豆菌をかけるのか、ハイビスカスやバナナの葉に住むテンペ菌をかけるのか、これだけ。

納豆に比べれば臭みはずっと少ないものの、やはり慣れによるのか、貴重な植物タンパク食ではあるが、テンペの匂いが気になるという人は少なくない。

このテンペは明治大学の研究者が、臭みを抑え、またひきわりにすることで食感を滑らかにすることでおいしく食べてもらえるようにと開発したものだという。最も典型的な食べ方テンペ・ゴレンで食したが、文句なくおいしかった。ビールのつまみに最高。

さらにこの「ひきわり」にすることによって、通常のテンペだと大豆の皮を廃棄するところ、皮まで食すことができるようになるとのこと。栄養の面でもよりよいものになっているということになる。

全国の農産物被害の多くが鹿によるもの。駆除したらやはり食べる。その鹿肉を流通にのせるしくみを作る必要がある

鹿肉バーガー。ふっくらジューシー、軽い味わい。鹿による農産物の被害は全国で問題に
鹿肉バーガー。ふっくらジューシー、軽い味わい。鹿による農産物の被害は全国で問題に

7年ほど前、「農村での鹿による被害が大きいので」と鹿肉料理研修会の講師として招かれたことがある。雑誌でも鹿肉料理特集でレシピを開発したこともある。

もみじ肉という別名もあるように、その赤さが特徴。昔は生で食べるあるいは、さっとしゃぶしゃぶにして食べるのが主流だった。だが寄生虫の存在が一時期騒がれたことから、厚労省が「しっかり火を通すこと」と指導して以来、とくに需要が激減してしまった、とその頃きいた。今もそれほど状況が変わっているとは思えない。

山で鹿をうっても、重いこともあり、そしてお金に替えることができないこともあり、で、山からおろされることなく、そのまま放置されていることも少なくないという。

そもそも鹿肉は、フランスではジビエの一つとされる高級品。
鹿肉のおいしい食べ方が普及することによって、スーパーなどでも入手できるしくみができれば、と思う。

 

乾物もまたオルタナティブ・フード

今回は乾物料理はなかったが、乾物もオルタナティブ・フードだ。

食材を無駄にしない。
軽いので輸送の際のCO2削減に繋がる。
新しいおいしさの創造。
農家のスモールビジネスに。
飢餓の地域にも水とセットすれば持っていけるかも。

そんなオルタナティブ・フードとしての乾物の魅力もまた、今の時代にあった食べ方が広まることによって浸透していくと考えている。

*乾物についての情報は主にDRYandPEACEのブログで発信しているので、こちらもあわせてご覧いただけると嬉しい。

何を食べるかを選択するのは、未来の社会への投票行為と同じだと思う

ただ自分の体にとってどう作用するかということだけを考えて食べていればいい時代は、少なくとも先進国に住む私たちにとっては、終わったと感じている。

人口増による食料不足が懸念され、固定種の野菜が減り、飢餓と飽食が同時に存在する社会的な不均衡があり、、、。

そんな社会にあって、私たちが何を食べるかという日々の選択は、どんな未来の社会であってほしいのかという「投票行為」でもあるという認識を、私たちは持っていなければいけないと思うのだ。

オルタナティブ・フード・プロジェクト。
応援したい。