「日本の地下水が危ない」地下水を巡る課題を、私たちは知る必要がある

「外国資本による日本の土地買い上げがすすんでいる。実は日本の水資源を狙ったものではないか」

そんなニュースを耳にしてきた。


日本の地下水が危ない
この本を読むと、実はそれは問題の一つに過ぎないことがわかる。

多くの人がこうした問題の所在を認識することがまずは必要だと感じた。

「土地さえあれば、地下水は汲み放題」が日本の法律の現状

土地さえ手に入れれば、地下水利用に制限はない。
日本には、これを規制する法律がないのだ。

しかし、地下水は地上を流れる川と同様、一カ所に留まるわけではない。

よそに流れていくはずだった水をくみあげてしまうことだってできてしまうのだ。

 

水道水より安いからと、地下水で水を賄う病院や企業。
水道料金を払う大口顧客がなくなれば、水道業者は干上がり、老朽化した水道管のメンテナンスもできなくなる。利用する個人客にその負担はのしかかる。

ペットボトル水にすれば、企業は儲かり、その企業のある自治体は税収が増える。しかし、大量に水をくみ上げることで、地下水の枯渇の怖れすら生じる。

広大な相続税が払えず、誰でもいいので土地を買ってほしい地主。水をビジネスにする企業に売ってしまえば、地下水利用のコントロールはできない。

持続可能な地下水利用にむけて何が必要か

自治体単位で、条例の制定にむけての動きが始まっている。

が、それぞれの立場の思惑があり、なかなか進まないのが現状。

 

著者は、利用のコントロールだけでなく、いかに地下水を涵養していくかが今後の課題と指摘する。


森林と水田とが日本の豊かな地下水を育んできたが、そのどちらもが昔のように十分に機能しているとはいえない。

著者は「ごはん1杯、地下水1500リットル」という熊本の言葉を引用している。熊本では、400年前に加藤清正が開いた水田によって大量の水が地下にしみ込んでいる。水田にはそんな機能もあるのだ。しかし米を食べなくなれば田んぼに水ははられなくなる。減反は減水に繋がる。


将来の生態系保全のために必要な水の量から逆算して、人間が使ってもいい量を算出し、利用制限をしていく生態共生管理の考え方もまた示している。

水不足に悩む国も多い中で、水に恵まれている日本ではあるが、目にみえないとはいえ地下水のコントロールをしていかなければ、いつか文字通り足元をすくわれることにもなりかねない。

まずは、地下水を巡る課題をこれだけわかりやすく記したこの本、ぜひ一読をおすすめしたい。

*余談だが、日本の土地が、国籍に関わらず取得できるということも初めて知った。