難民問題を考える〜「ヨーロッパから民主主義が消える」を読んで

ドイツ在住の作家、川口マーン恵美氏の「ヨーロッパから民主主義が消える」を読了。
昨年末のベルリンのクリスマスマーケットでのテロは、EUの中で最も難民に対して寛容な姿勢をとるドイツにとって、さらに難しい課題を投げかけたことになる。

これからヨーロッパでの難民政策はどんな方向に向かうのか。

企業にとってはメリット、個人にとっては、、、

EUの中で経済的にはドイツが一人勝ち、と言われている。

しかし、実際のところ、東西ドイツ統一からこっち政府はずっと節約に次ぐ節約できており、穴だらけの道路がそのままにされているほどに公共投資がされていないという。

また、EU内での人の自由な行き来を保証する「シェンゲン協定」によって東欧などから安い労働力がドイツになだれ込んだことによって、ドイツ人もまた安い労働力で働かざるをえない。

企業は儲かるが、国民の間で利益が公平に分配されているわけではないのだという。企業からすれば、今の難民流入も安価で若い労働力の流入であり「難民のおかげで経済成長が見込める」という人すらあるという。

企業と一般国民との感覚の差は大きい。

ダブリン協定ってそういうことだったのか

メディアに流れる情報を浅くしか読み取っていなかったので、恥ずかしながら難民に適用されるダブリン協定の内容について把握していなかった。重要なのは以下の2つという。

①EUの中では難民の登録は一度しかできない。登録した国はその難民を他の国に自由に出国させることも基本的にはしてはいけない。登録せずに出してしまうのはなおいけない。
②庇護申請はEU内でしかできない。まずEUに入らなければ難民として認められない。 

そのために、難民に対して最も寛容な政策をとるドイツで難民登録をしたい人が多い。そしてアフリカやアラブ方面からEUに向かう人たちは、直接陸路でドイツに入ることができないためにその途中の国で難民申請をすることなくドイツにただひたすら向かう道を選択する。

そもそもなぜアフリカや中東がこんなことに、、

ヨーロッパ人は今も難民に対して上から目線で接している、少なくとも外から見る限りでは。

しかしなぜそもそもこうなったのかといえば、ヨーロッパ人による搾取の歴史が原因で、そこのことがまた、イスラム過激派の台頭を許したとする川口氏の意見に賛同する。

では今どうしたらよいのか?
ここまで積み重なってきた歴史を元に戻すことは到底できない。
一個人として何ができるのか。残念ながら何も思い浮かばないのである。