NYの三つ星レストランのシェフが10年のフィールドワークの末に考えた「第三の皿」とは

読み応えのある上下巻だった。
土地を訪れ、人と対話し、食べ、シェフとして持続可能な食の未来のために何ができるのかを考える。

著者ダン・バーバーの十年に渡るフィールドワークと思索のノート。

ある夏の夜にふと湧いた疑問
Farm to Table地産地消によるフードチェーンの短縮化を目指した。そんな僕たちのレストランのメニューには本当に持続可能性があると言えるだろうか。
そこからダンが未来の食を表現する「第三の皿」探求の旅は始まる。

生産者や育種家たちとの対話の深さ。それは人生観、世界観を反映しているから

スペインのイベリコ豚の産地デエサで強制給餌をせずに天然フォアグラを育てるエドゥアルド。
上流から流れてくる水をさらによくして海に送り出すスペインの養殖場「ヴェタ・ラ・パルマ」のミゲル。
スペインのシーフードの天才シェフ、アンヘル。
育種家のグレンやスティーブ。
通訳をかって出るヨーロッパ史の元教授でジャーナリストのリサ。その出会いと対話の深さに感じること多々。

肥料を使って小麦を単一栽培すれば、同じ面積の畑で育てられた有機栽培の小麦よりも収穫量が多くなるのは事実だが、小麦以外の食べ物は産出されない。灌漑が進み地下水は減る。化学肥料で土壌が痩せる。
一方で、有機栽培の農地で土壌を肥やすために植えられている大麦やオーツを合わせれば小麦だけの場合より多くの収穫量が確保できる。対抗するためには、これを食べてもらわなくてはいけない。

未利用の魚をシェフがクローズアップすれば、それに注目が集まり、個体数が激減すると言うリスクもある。

訪れる各地で、ダンは、さまざまな気づきをえ、思索を重ねていく。

そして創られる第三の皿とは

 レストランは新しい食の倫理を創造することができる場であり、シェフは食システムに変化を引き起こす媒体にもなりうるという確信からダンが最終章で披露する「第三の皿」は、食べものへの、自然への愛、そして自然の多様性を受け入れながら美味しい食材を作るシステムを創り出している生産者たちへの共感に溢れている。

 

ニューヨークまでダンの料理を食べに行きたくなった。
この本はニューヨークタイムズ紙のベストセラーであり、ジェームズ・ビアード賞も受賞している。600ページを超えるこの本が、世界中でもっと多くの人に読まれることを望む。