未来の食はどうなる?〜「料理と科学のおいしい出会い」を読んで〜

分子レベルでおいしい料理の秘密を探り、よりおいしい料理を開発する「分子調理」の研究者・石川伸一氏による本「料理と科学のおいしい出会い 分子調理が食の常識を変える」を読みました。

分子レベルでおいしい料理の秘密を探り、よりおいしい料理を開発する「分子調理」の研究者・石川伸一氏による本
「料理と科学のおいしい出会い」味覚のしくみと、食の分野での新しい技術の紹介
分子調理学」を
「食べものを調理して美味しく頂く家庭で起こる現象を分子レベルで解明する学問」
と、

分子調理法」を
おいしい食材の開発、新たな調理方法の開発、おいしい料理の開発を、分子レベルの原理に基づいて行う”技術” 

と定義して、この二つが刺激しあうことが大切としています。

分子調理といえば、エルブリ?それだけではないです。

分子調理と聞くと、まずはエルブリをイメージしました。この本もエルブリのフェラン・アドリア氏のエピソードから始まります。

とはいえ、石川氏が考える分子調理はもっと広く、正直なところ、「ついていけないなあ」「それを食べたいとは思わないなあ」というものも含まれていました。

味覚のしくみから、未来の調理法まで

テクスチャーをどう感知するのか、温度の差で風味が変わるのはなぜか、味覚の相殺、対比、相乗、変調などの現象他、私たちが「おいしい」と感じる時のカラダのしくみの解説は勉強になりました。

(コラムの中で、ゴードン・M・シェパード氏の「ニューロガストロノミー」についても触れられていました。この読後感想を綴ったブログ記事はこちら

後半は、開発されているさまざまな調理法の紹介

凍結含浸法」と言う技術を使えば、圧力を利用して食材中に柔らかくする酵素を入れ込むことで、煮ても固い筍をババロアのようにスプーンですくって食べられるようになるとか、
食品成分を「繋ぎあわせる」酵素の一つ「トランスグルタミナーゼ」によって、かまぼこが滑らかに結着したり、ひき肉がくっついて見た目はまさにブロック肉になるとか、
超高圧で食材をプレスすることで分子に物理的な変化を起こし、高分子のタンパク質やでんぷんは加熱した状態と非常によく似た現象を起こす。熱を加えていないので、加熱による栄養損失が少なく、色や香りに変化が少ない。そんな「高圧加工」という技術がすでに出てきているとか、

3Dフードプリンターによって、調理の世界で、今後大きな可能性が広がるのではないかとか。
家庭ですぐに試せるものではないですが(好奇心からの興味はあるものの、普段の調理であまり試したいとも思わないのが個人的に正直なところでもありますが)、食の世界でさまざまな技術が開発され、あるいは開発されつつあることがわかります。

私たちの食はどこに向かうのだろう?

食に何を求めるのか。人それぞれではあると思います。


分子レベルでおいしい調理法を解析し、それを調理のコツとして取り入れることには賛成なのですが、自然とどんどんかけ離れていくような料理には、距離を置いておきたいような気持ちで読み終えました。料理について、食についての考え方、私は保守的なのかもしれませんね。